Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

【皮ふ疾患まとめ】酒さ様皮膚炎~医原性の皮ふ炎~

おはようございます🌤

 

あまりふざけた文章をかくと「医師としての格」が下がるかなと

おふざけなしの文章を書くこともあるんですけど

 

 

スタッフから

「ちょっとボケなしでまじめだと面白くないですよー」といわれ

ちょいちょいネタを仕込まないとな-、と考えなおした次第です。

面白い文章書かないとですよね。

 

 

どうも、やなせです。

根はまじめなんですよー(たぶん) ← すでにふざけている

 

 

 

さてさて。

 

 

またもや

ある知り合いがどうやら

「酒さ様皮ふ炎」でほんとうに苦しんでおられるようで

近々受診いただくとのこと、、、

 

まとめてみます。

 

皮ふ病の中にはいろいろなご病気がありますが

ことさら

「酒さ様皮ふ炎」は

医者が作り出してしまう可能性が高い皮ふ病ですので

診断、治療や対処は丁寧に判断し行う必要があります。

 

皮ふ科医も〝酒さ〟や〝酒さ様皮ふ炎〟は知っていても

なかなか治療が難しいご病気ですし

 

医者が作り出す医原性の疾患ゆえ、総合病院にいると紹介されることが

ほとんどありませんでしたので

開業医さんに通う患者さんのなかにはけっこう困っておられる患者さんが多い、

と1-2年前開業した先生がおっしゃっていました。

 

 

以下、、まとめてみます。内容は専門的で皮膚科医向けになっています。

 

※酒さについてのまとめは以下 

2022/2/22(1年以上前、ネコの日🐈)に書いています。

【皮膚疾患まとめ】酒さ(赤ら顔)の治療 【専門家向け】 - Yanase Derma’s Diary

 

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酒さ様皮ふ炎 rosacea-like dermatitis,

口囲皮膚炎(perioral dermatitis), ステロイド酒さ(steroid rosacea)とも呼ばれる

 

【疾患概念 Concept】

若年女性成人に多くみられる良性の皮ふ疾患で

口囲、オトガイ部、鼻唇溝~頬部、眉間などに 紅斑;あかみや

小さな丘疹~膿疱(ぶつぶつ、ウミ)、乾燥などを種々の程度に繰り返します。

海外では口囲皮ふ炎perioral dermatitisと呼ばれることが多いようです。

 



 

【歴史 History

1951年にステロイド(ヒドロコルチコイド)外用薬が使用されて以降、ステロイド外用薬と酒さ様皮ふ炎との関連がつよく認識され、LeydenとKligmanという酒さ/ざ瘡の大家がsteroid rosaceaとの病名を提唱しました。

 

本邦では1970年代に占部医師が口囲皮ふ炎(酒さ様皮ふ炎)はステロイド外用による副作用、として紹介しています。また、ステロイドのみでなくタクロリムス(プロトピック®)による酒さ様皮ふ炎も報告されています。

 

酒さ様皮ふ炎/口囲皮ふ炎は以下の要素から成り立ちます。

 

① 口囲限局の皮ふ炎という分布を示す

② ステロイド外用によって誘発された皮膚炎としての病名

③ 酒さ病因を持つ患者へのステロイドを外用により酒さを増悪/誘発させた病態

④ フソバクテリアによる口囲の脂腺性毛包を中心とした皮ふ炎

 

ある文献(参考文献参照)では「カンジダ」「フソバクテリア」「毛包虫」を感染源として考えるべきと提案されています。

 

【診断 Diagnosis】

酒さ様皮ふ炎を診断するためには、ステロイド/タクロリムスをどのような皮疹に対し外用されたかという背景を確認する必要があります。

① 背景に酒さの可能性があること

 ⇒ 赤ら顔にステロイドを外用するときには診断とゴールを明確にする必要があります

②酒さの鑑別疾患/併存疾患や除外診断を確実に行うこと

⇒紅斑性酒さ(あからがお)にステロイドを外用することにより丘疹膿疱性酒さ(ニキビに類似した皮ふ病変)へと移行することがあります

鑑別には以下の検査を必要に応じ実施するとされています。

・拡大鏡(ダーモスコピー)、

・貼付試験(パッチテスト);接触皮膚炎の有無、

・毛包虫の検索

・紫外線過敏性検査

・皮膚生検

ステロイドやタクロリムス外用の中止により一過性の悪化が確認されても、3か月程度で皮疹が改善・消退することを確認すること

 

【治療 Treatment】

ステロイド外用薬を中止し、皮膚症状がコントロールできる状態を目標にします。

ステロイドの外用を中止するといわゆるリバウンドの症状が出て顔面全体が赤くなり悪化します。この時期を克服して、治療を継続することが必要となります。

ステロイドを弱めながら使用を漸減していくという報告も散見します。

ステロイドを強くしてはいけません。

だめよ

・メトロニダゾールゲル(ロゼックス)外用

・クリンダマイシン(ダラシン)ゲル外用

アダパレン(ディフェリン)ゲル外用

・タクロリムス(プロトピック)軟膏外用(諸説あり)

・テトラサイクリン系抗生剤の内服

・イソトレチノイン内服(重症例・海外)

 

【生活指導】 

悪化因子として以下を避けることが望ましいです。

急激な温熱の変化・温熱刺激 紫外線 香辛料 飲酒

 

【参考文献】

L Tolaymat , MR. Hall, Perioral Dermatitis, StatPearls ,2023

山崎研志, 酒さ様皮膚炎を適切に・早期に診断する MB Derma, 320: 94-99, 2022

黒川一郎, 手こずる皮膚疾患の外用療法を含めた実際の治療, MB Derma, 300: 127-131, 2020

山下理絵ら, 赤ら顔-美容治療-, MB Derma, 294: 259-265, 2020

 

アトピー性皮ふ炎でもそうですが

なんでも正しいことを正しく診断し、正しい治療を行うことが最も大切です。

 

感覚的な治療が行われていればこのように

医原性の病気を引き起こす可能性があります。

「塗ればよくなるけどやめるとすぐ悪化する口囲の皮ふ炎」という

同じような病気に悩まれている患者さんに少しでも福音となれば幸いです。

 

では~~ 

きょうもいちんちがんばりましょう~~

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がんばるぞ

※この文章に書かれた内容と経過は筆者の経験と知識に基づいたもので、必ずしもすべての症例に当てはまるわけではありません。治療には専門家の指示のもと行っていただきますようお願いします。内容に関しては適宜改定・修正をする可能性があります。d