Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

【皮ふ疾患まとめ】異汗性湿疹/汗疱~夏季に多い汗による湿疹~

みなさまこんにちは☂

 

日に2回も更新する暇人な僕です。

大雨の中、温水プールに妻と息子と一緒に車で出かけたのですが

 

まさかのレベル4の大雨警報にて施設が閉館するというアクシデントに見舞われ

ボーリングに切り替えて帰ってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ボーリングで、地面を掘ってきました(うそ)

 

 

 

 

 

 

さて。

 

最近熱くなりたくさん汗をかく季節となってきました。

この掌蹠の多汗にともなうためか、6-7月に入り手掌湿疹(異汗性湿疹/汗疱)の患者さんが増えてこられましたのでまとめてみます。

 

私のもとにも総合病院時代より異汗性湿疹の患者さんがおいでになりますが、なかには大学病院で治療歴のある方もおられ、免疫抑制剤の内服(適応外)を使用していますがなかなか一筋縄ではいかないこともあります。

 

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異汗性湿疹/汗疱dyshidrotic eczema/pompholyx)

 

【まとめ summary】

異汗性湿疹は、成人の手足の皮ふ炎の原因として非常にありふれています。

とても痒みが強い再発性の小水疱性発疹で、手掌/足底に発症します。

・小水疱は臨床症状として所見で "タピオカ・プリン "のように見えることがあり、これが本疾患の特徴的な臨床的特徴です。

病因として遺伝的要因、金属アレルギー、id反応※などの多因子性病因があり、まれに薬剤関連の副作用として発症します。

通常はステロイドの外用で治療するのですがステロイド外用に抵抗性のこともあり、光線療法または全身性免疫抑制剤による治療を必要とすることがあります。

難治性の異汗性湿疹の治療にデュピルマブを使用した症例報告や小規模のケースシリーズがいくつか報告されているようです。

 

※id反応(イド反応):湿疹(うっ滞性皮膚炎、接触皮膚炎など)や細菌や真菌などの感染症に対する全身性の急性皮ふ反応で、自分の皮ふ組織の抗原または感染性抗原に対する免疫反応、原発部位からのサイトカインの血行性播種等により全身症状を呈すると考えられている。(Medscapeを和訳のうえ引用改変)

 

【病因・発症機序 Etiology and pathogenesis】

異汗性湿疹は急性手掌足底湿疹として知られ、手足に発現する強いそう痒性の小水疱性発疹です。

・〝異汗症:dyshidrosis〟という用語は、1873年に手掌、足底の水疱形成が汗腺に関連すると考えられていたために使用されたのですが、実際には汗腺の異常とは無関係です。

・病理学的には厚い表皮の表皮内海綿状態です。

・異汗性湿疹の正確な原因は確立されていませんが、アトピー性皮膚炎、遺伝的要因、接触アレルギーや刺激物への暴露、多汗症、喫煙、紫外線への暴露、および免疫グロブリン静脈内注射の使用など、いくつかの危険因子が報告されています。

 

【臨床症状 clinical manifestation】

手指の側面に、小さく、緊張した、透明な、液体を満たした小水疱が形成され、これが大きくなって水疱を形成することがあります。小水疱は、"タピオカ・プリン "と呼ばれる深在性の外観を呈することがあります。

病変は手掌全体に広がることがあり、急性に発症し症状はしばしば再発性です。

異汗性湿疹/汗疱 dyshidrotic eczema/pompholyx

【治療 Treatment】

 

・通常はステロイドの外用で治療されるのですがステロイド外用に抵抗性のこともあり、光線療法または全身性免疫抑制剤による治療を必要とすることがあります。

・下記の論文(Paediatr Drugs, 2023)ではまずは

ステロイド外用 ついで

②カルシニューリン阻害薬外用剤(タクロリムス;プロトピック®)

③PDE4阻害薬外用剤(ジファミラスト;モイゼルト®)

④角質軟化剤

の順に使用される頻度が高く、紫外線照射も併用されるようです(海外の報告です)。

全身療法ではデュピルマブ>MTX>シクロスポリン>経口ステロイドの順に使用されています(海外の報告です(筆者注:本邦では適応外となります、また小児の皮ふ疾患の治療雑誌ですので、経口ステロイドの使用が少ないと考えられます))

・難治性の異汗性湿疹の治療にデュピルマブを使用した症例報告や小規模のケースシリーズがいくつか報告されているようです。

 

外用治療と内服治療Paediatr Drugs. 2023, 25: 459–466.

【参考論文 References】

Calle Sarmiento PM,Cureus. 2020, 12: e10839. doi: 10.7759/cureus.10839.

Haft MA, Park HH etal.: Paediatr Drugs. 2023, 250: 459-466

Li Y, Xiao J, Sun Y et al.: J Asthma Allergy. 2023, 5: 1-8

Ikumi K, Morita A.et al.: J Dermatol. 2020, 47: 922-923

ほか

 

アトピー素因のある難治性の方にはシクロスポリンを使用していたのですが

デュピルマブの使用が海外の症例報告レベルですが多いことをみると

今後、難治性の方に使用可能な可能性が高いと考えられました。

また、デュピルマブが使用可能であれば、JAK阻害薬も良い適応かなとも考えます。

また、多汗症がベースにある症例にはボトックスによる治療の報告も見られます。

となると、掌蹠多汗症の治療が選択肢にあがるか・・・?

今後症例の蓄積を試みます。

 

以上です。明日(休診日)こそボトックスについてまとめて、

そろそろほんとに導入したいです。ではでは。

※この文章に書かれた内容は筆者の論文まとめおよび経験知識に基づいたもので、必ずしもすべての症例に当てはまるわけではありません。治療には専門家の指示のもと行っていただきますようお願いします。内容に関しては適宜改定・修正をする可能性がございます