みなさま、こんばんは。
3月も残りわずかですね。
新年度を控えて、今の間にピアスをあけようとか、
皮ふのできものをとっておこうとかで
おいでの方がたくさんおいでです。
なかには、わき汗や手のひらのあせを
医学的にしっかりと治療したいとお越しの方もいらっしゃいます。
本日は、いわゆるワキあせ・手アセ(腋窩多汗症/掌蹠多汗症)について
まとめてまいります。
以下の文献をわかりやすくまとめます。
藤本智子ら, 原発性局所多汗症診療ガイドライン, 日皮会誌: 133, 157-188, 2023
追記) まとめてインスタに載せましたのでそちらからお示しします
当院では
◎エクロックゲル1500円/本・ラピフォートワイプ2200円/月・アポハイドローション700円/月(3割負担の価格) 処方
◎腋窩ボトックス(当院は自費で実施に変更します:両腋窩ボトックス® ¥55,000-)
◎プロ・バンサイン処方(1100円/月(3割負担の価格) の処方
さて、以下、まとめた内容を記載してまいります。
【定義】
手掌・足底・腋窩・頭部顔面の限局した部位から両側性の過剰な発汗を認める状態
【罹患率】
0.6-1%(イスラエル、1997年)、
16.3%(ドイツ、2013年)、
5.5%(スウェーデン、2016年)
10.0%(腋窩5.9%、頭部顔面3.6%、手掌2.3%、本邦、2020年)
多汗症は自身の多汗症状が日常生活に支障を与えていると自覚すれば治療を開始すべきとされます。ただし、受診率は6.3%と低率にとどまっています(2013、本邦調査)
【重症度診断】
HDSS(hyperhidrosis disease severerity score)
1. 発汗は全く気にならず日常生活に全く支障がない
2. 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
3. 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に常に支障がある
4. 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
(多汗症治療にはHDSSが3以上が必要です。
1) 塩化アルミニウム製剤
(推奨度 手掌:B, 足底・頭部顔面:C1)
(当クリニック取り扱いなし)
原発性局所多汗症においてまず行ってよい治療。重症度に応じて、単純外用や密封療法(ODT:occlusive dressing technique)をおこなってよい。腋窩・手掌多汗症・頭部顔面は単純外用、掌蹠多汗症の重症例にはODTが望ましい。刺激性単純接触皮膚炎などの副作用が生じることもある(ステロイド外用で改善する)。作用機序は塩化アルミニウムが角層内汗管に沈着し閉塞させたり、金属イオンが合成した沈殿物が汗の上皮管腔内を傷害し汗管を閉塞させるなどが考えられている。80%以上の有効性があるとされている。20%、30%、50%製剤などがある。
2)外用抗コリン薬(ラピフォート®ワイプ、エクロック®ゲル、アポハイド®ローション)
(推奨度: 腋窩多汗症:B, 掌蹠多汗症:C1,頭部顔面:C2)
本邦において以下の製剤が承認された。
①3.75%グリコピロニウムトシル酸水和物; ワイプ製剤(2022年)
②5%ソフピロニウム臭化物; ゲル剤(2020年)
③20%オキシブチニン塩酸塩
(アポハイド®ローション:手掌多汗症)
(当クリニックいずれも処方可)
作用機序は、汗腺分泌部に存在するM3受容体を介したコリン作動性の反応を阻害し、外用部位のエクリン汗腺の発汗を抑制する。
副作用は
ソフピロニウム:ラピフォート;抗コリン作用による口渇5.0%、排尿困難:3.7%、散瞳が3.6%(国内第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(M606102-02))
グリコピロニウム:エクロック;口渇16.9%、霧視6.7%、散瞳5.3%、排尿障害4.2%、鼻腔の乾燥3.6%、ドライアイ2.9%と報告されている(ATOMS1/2試験)
臨床成績は、国内第三相試験で
50%以上の改善はエクロックが77.3%、ラピフォートは90%
HDSS1-2かつ平均発汗重量が50%以上改善はエクロックが53.9%(52週)、ラピフォートは41.1%(4週)
3).水道水イオントフォレーシス療法
(推奨度:掌蹠多汗症 B,腋窩多汗症 C1,頭部顔面多汗症 C2)
当クリニックでは実施していません
イオントフォレーシス治療法は,患者の右手,右足を水道水で浸した金属トレイの中に入れ一方を陽極に他方を陰極にして 6~9 mA の電流で通電を 20 分間行い,この通電を週に 1 回毎週繰り返し施行した結果,統計学的に有意に発汗量が低下することが報
告されている。
機序として電流を通電することにより直接汗腺細胞のイオンチャネルなどに影響を与える可能性が考えられている。
4)A型ボツリヌス菌毒素製剤の局注
(推奨度:掌蹠多汗症 C1,腋窩多汗症 B,頭部顔面多汗症 C1)
当クリニック実施可
ボツリヌス菌毒素はグラム陽性菌の clostridium botulinum が産生する神経毒素で A~G 型の 7 種がある.この中で A 型ボツリヌス毒素(BT-A)は精製度が高く,効力や作用時間が最も優れており,コリン作動性神経の接合膜からのアセチルコリン放出を抑制す
る作用がある.注射時疼痛、手掌足底では筋力低下の可能性も
・掌蹠多汗症:
80%で効果は5か月間見られ、特に副作用はないとする報告(Naumann、50U)
全例に6か月間有効、ただしHDSS3以上の重症例以上では効果は限定的(Yamashita,60U)
15年以上BT-Aを投与した117症例において80%で改善が継続(左右50Uずつ計100U)
注射時疼痛は限定的で、手の筋力低下は稀。
4)抗コリン薬内服(推奨度: C1)
当クリニック処方可
抗コリン薬(プロ・バンサイン®)は、米国多汗症センターからの報告では外用療法やボトックスの無効症例のみに使用を推奨するとされる。カナダでは顔面多汗症に対して第一選択とされている。ただし、高齢者に対する過活動性膀胱の治療では認知症を誘発する可能性が示され高齢者での使用は推奨されない。前立腺肥大や緑内障には禁忌。副作用として口渇・霧視・ドライアイ・尿閉・頻脈・めまいなどがあるため、用途に合わせて適時服薬としてもよい。
さてさて、当院では
◎エクロックゲル1500円/本・ラピフォートワイプ2200円/月・アポハイドローション700円/月(3割負担の価格) 処方
◎腋窩ボトックス(当院は自費で実施に変更します:両腋窩ボトックス® ¥55,000-)
◎プロ・バンサイン処方(1100円/月(3割負担の価格) の処方
が可能です。
ではでは~ またあらためてまとめて、インスタやブログに上げますね。
※この文章に書かれた内容は筆者の論文まとめおよび経験知識に基づいたもので、必ずしもすべての症例に当てはまるわけではありません。治療には専門家の指示のもと行っていただきますようお願いします。内容に関しては適宜改定・修正をする可能性がございます。