みんさん、こんにちは。
「胡子大祭」は、
毎年11月18日19日20日の3日間に中区胡町にある胡子神社で開催される秋季大祭で、
「とうかさん大祭」・「住吉祭」と並んで広島三大祭りの一つです。
広島に冬の訪れを告げる祭りで、地元では「胡子(えびす)講」とも呼ばれ、
商売繁盛の守り神とされています。
縁起物の「こまざらえ(竹のくま手)」を買って、
神棚に飾ってみました。
さて、昨日、一昨日と講演会でお話しする機会を頂戴しましたが
そのときに尾道総合病院の現在の部長とお話しして
「韓国とフランスでトコジラミが爆発的に拡大している」というお話を聞きました。
最近、
ドクガ皮ふ炎と考えられる患者さんを診ましたし
開業してからも虫刺症として矛盾ない症例の患者さんをたくさん診察しましたので
本日は〝トコジラミ〟についてまとめます。
【出典】
●刑部全晃, 医学のあゆみ, 279: 883-888, 2021
●金井信一郎, INFECTION CONTROL, 28: 153-155, 2019
●夏秋勝, 成人病と生活習慣病, 46: 2016
ほか
【概論】
かつて、第二次世界大戦前までは日本において珍しいものではなく、
戦後に殺虫剤(有名なDDT:現在は発がん性物質として使用は禁止)の散布で
激減したのですが、
海外渡航や簡易宿泊施設、リサイクル家具などの普及、
また殺虫剤耐性の、
いわゆる〝スーパートコジラミ〟の出現により
いまだ本疾患がみられることは少なくありません。
【トコジラミの潜伏場所】
トコジラミは特に不潔な環境を好むわけではなく、
吸血すべきヒトと隠れ場所があれば,
清潔不潔や新旧に関係なく生息すると考えられています。
(皮膚科の臨床 2008; 50. 199-202 )
シーツやタオル類をしっかり交換している施設でも繁殖がみられ,
自宅やホテル,簡易宿泊所やホームレス収容施設,サウナ施設からも
生息の報告があります(皮膚病診療, 2009; 31: 949-52).
トコジラミはあらゆる隙間に入り込み,
ベッドをはじめ家具の隙間や裏側,
シーツやマットの縫目,畳の裏,クロスの隙間や絵画の裏など,
あらゆる場所が生息場所となり巣を作る.
トコジラミは吸血すると血糞とよばれる糞を排泄し周囲を汚すため,
とくに潜伏している場所の周辺には茶褐色のシミが多数付着しており,
居場所の特定に役立つとされます。
【臨床症状と治療】
トコジラミは吸血の際に皮膚に唾液腺物質を注入し、
皮膚症状はそれに対するアレルギー反応によって生じる皮膚炎です。
トコジラミに初めて吸血された場合は感作が成立していないため皮疹は出現しません。
トコジラミ刺症による皮疹は1-2日後に紅色丘疹を呈し強いかゆみを伴いますが,
1~2週程度で色素沈着となり軽快します.
同一個体が近接部を複数回刺し変えることもあり,
皮疹が狭い範囲に不規則に並んで認められる臨床像を呈することがあります.
なお、
治療は通常の虫刺されと同じでステロイド外用薬が有効です。
かゆみや症状が強い場合は抗ヒスタミン薬やステロイドの内服を行うこともあります。
個々の皮疹は通常,1~2週間で軽快しますが、
居住環境内にトコジラミが生息する場合は,適切な駆除対策を立てる必要があります。
【トコジラミの駆除対策】
いま国内で蔓延しているトコジラミの多くは
カやゴキブリに対し通常使用されるピレスロイド系殺虫剤に抵抗性を有している
とされています。(冨田隆史.衛生動物20; 61: 223-229, 2010)
いわゆるスーパートコジラミですね。
現時点で,家庭で使用できる最も効果的な薬剤は,
カーバメート系殺虫剤のプロポクスルあるいは
オキサジアゾール系殺虫剤のメトキサジアゾンを有効成分とする
「待ち伏せ型」のスプレー式殺虫剤です。
潜伏場所への薬剤の直接注人や,
俳徊場所への散布残留処理が効果的とされており,
個人で購入できるトコジラミに有効な殺虫剤としては,
カーバメート系やオキサジアゾール系を有効成分とするものを選択し
購入するのが望ましい。
◎スプレー式殺虫剤として,
バルサンまちぶせスプレー ,
コックローチPA,
トコジラミ ゴキブリアース,
◎燥煙剤として,
バルサンCPMジェットが市販されています。
生息場所の特定が困難で,虫体の数が多く,
いたる所にトコジラミが潜んでいるような場合は個人での完全な駆除は難しく、
専門の駆虫業者に依頼し徹底した駆除が必要となってきます。
その駆虫方法の例として,有機リン系の殺虫剤を室内にくまなく散布し,
家具類への吸引や高熱処理を実施する.
その間は室内にいることはできないため外泊が必要となり,費用も高額になります。
なお,衛生害虫駆除の相談先には
【おわりに】
長年にわたり人類を困らせてきたトコジラミですが、
一度はいなくなったかのようにみえたが,殺虫剤耐性を獲得しながら,
人々が世界中を旅行するとともに生息域を拡大しているようです。
この虫の厄介なところは,襲われていること自体に気づきにくく,
医療機関を受診してもトコジラミ刺症と診断するには虫体を確認する必要がある
こと,
また,トコジラミと判明しても駆虫には相当な手間と労力が必要になることです。
さてさて、旅行で古いホテルに宿泊するとトコジラミの餌食になるかもしれません。
虫刺されにはお気を付けください!