Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

【美容】シミレーザー治療について。

おはようございます。

 

今日は勤労感謝の日です。

朝から雨で、せっかくのお休みで

紅葉もきれいでしょうのに紅葉狩りなど野山に行けずに残念ですね。

 

 

雨の日はゆっくりと読書や仕事でもして過ごしま-す(うそ)。

 

 

勤労感謝の日って、Wikipediaによると

新嘗祭(にいなめさい):五穀豊穣を祝う日、が戦後に

祝祭日から国家神道の色彩を払拭するという方針のもとで

名称を変更したものらしいです。

 

 

勤労じゃなくてすべてもののに感謝する

「Thanksgiving Day」

でいいですよねー。

 

 





 

 

 

 

 

さて、以前、本ブログで、ファミリードクターというサイトで

コラムを書いていると書きました。

 

 

yanasettey.hatenablog.com

 

ようやく💦

6本のコラムが完成しました。

 

いま、3本が公開中です。

 

・ほくろ(色素性母斑)から(メラノーマ)悪性黒色腫は生じるのでしょうか? https://www.family-dr.jp/?column=20840

・そのかゆみは、皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)かもしれません! https://www.family-dr.jp/?column=20762

・そのできものは皮膚がんではないですか?

https://www.family-dr.jp/?column=20756

 

 

ひきつづき、

・ニキビ  これからのニキビ治療 

www.family-dr.jp

・シミ   顔のシミとレーザー治療(日光性色素斑など)

www.family-dr.jp

・薬疹   薬疹のすべて ~お薬のアレルギーはありませんか?~

www.family-dr.jp

についてかき上げましたので

 

まずは美容、シミの病態と治療について転記します。

シミってあらためて勉強してみると奥が深いんですよね。

 

いざ書くとボリューミーでしたん(量が多かった)・・・。

 

 

またいずれURLを貼りますので、興味ある方はそちらへ飛んでくださいね。

 

 

以下添付します。

 

 

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一口に顔の〝シミ〟といっても、その中にはたくさんの病態があるため明確な定義はありません。

 

一般的には〝限局的な皮膚の色素の増加〟のことを指しており、

いわゆる〝シミ〟に含まれる疾患として

 

1) 老人性色素斑(日光黒子)

2) 脂漏性角化症

3) 肝斑

4) 後天性真皮メラノサイトーシス/遅発性両側性太田母斑

 

などがあります。以下、詳しく書いていきます。

 

 

シミの分類 参考文献1)より引用

 

シミの分類

〝シミ〟の内訳ではいわゆる〝シミ〟で来院される患者さんの60%は老人性色素斑で、

次いで後天性真皮メラノサイトーシスが8%、扁平な脂漏性角化症が7%、

その次に肝斑5%と続くと報告されています1)

 

なお、どのタイプのシミであれ、治療前後は丁寧に遮光しこする刺激を避け、

必要に応じ美白剤の補助治療がないと、シミが再燃したり、

悪化したりすることもありますので、

施術者に丁寧にカウンセリングを受けることをお勧めします。

 

[1]  老人性(ろうじんせい)色素斑(しきそはん)

/日光色素斑、日光黒子 ( solar lentigo/senile lentigo)



顔面や手の甲などの露光部(太陽光のあたる場所)に生じることの多い、

点状~貨幣大くらいまでの大きさの境界が鮮明な円形に近い淡い褐色斑です。

肌の色が白いかたがスポーツなどで若いころから日焼けを繰り返していると、

比較的若いかたでも小さい茶色のシミが多発してくることがあります。

 

先にも書きましたが、

 

〝シミ〟の訴えで皮膚科を受診するかたの6割が

日光色素斑であると報告されています1)

 

慢性的に紫外線にさらされることにより

角質細胞のなかにメラニン色素が増加した状態であり、

ほとんどの場合Qスイッチレーザーという治療を選択して照射すれば

おおむね色は薄くなります(一時的に炎症後の色素沈着を残すことがあります)

(自費診療となります)。

当院ではQスイッチRuby LASERでの治療を予定しています。

 

ただし、肝斑を合併している方にQスイッチレーザーを照射すると

シミは一時的に濃くなることがありますので、

施術前の丁寧な確認が必要です。

 

ケミカルピーリング

レーザーではない光治療(IPLなどのフォトフェイシャルなど)でも

ある程度の効果が見込まれますが、

効果が緩やかなうえ複数回の治療が必要になることが多いかもしれません。

 

治療後に、赤みや腫れが引いて

お化粧ができるようになるまでの期間をダウンタイムというのですが、

 

ダウンタイムを望まれない方は

このような負担のかからない治療が望ましいかもしれません。

 

※なお当院(未開院💦)では、色素、赤みに選択性の高いロングパルスYAG/Alexレーザーで

ダウンタイムなくお肌の赤みやくすみなどの色調の改善をおこなう予定です。

 

美白剤を外用してもピーリング(角質を薄くはぎ取る)作用がないと

このタイプのシミには十分な効果は見込まれないとされています1)

 

[2] 脂漏性(しろうせい)角化症(かくかしょう)/

老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)(seborrheic keratosis)

脂漏性角化症の炭酸ガスレーザー治療の経過例



脂漏性角化症は老人性色素斑が進行したものとご理解いただいてよく、

紫外線にさらされることによって

お肌の角質細胞がもりあがりメラニン色素が増えたもので、

ご年齢によるシミやイボのことをいいます。

 

加齢による変化とはいえ20~30代以降でみられることもあります。

良性ですので放置してもよいのですが、

整容的な希望があれば切除したり、

液体窒素で冷凍凝固(れいとうぎょうこ)治療をしたり、

レーザーで焼灼(しょうしゃく)治療したりすることにより除去は可能です。

 

 

悪性の可能性が否定できない場合は

一部皮膚を取って調べる生検という手技や摘出が推奨されます。

 

※つい最近もシミのようにみえる顔面の悪性黒子; メラノーマを2名経験、手術しました。

 

 [3] 肝斑(かんぱん) (melasma)

肝斑の症例

 

肝斑は一般に

紫外線暴露や妊娠、経口避妊薬の内服、こする刺激などをきっかけに生じるとされ、

思春期以降の30代前後の女性に生じることが多いシミです。

 

両側性に生じ、全体的に色調が均一な淡い褐色斑が

頬骨部を中心として眼周囲をさけて見られることが多くみられます。

 

本症の病態は炎症後の色素沈着に類似し、

メラニンの合成が増えている状態です2)

肝斑の治療には紫外線をさけることがもっとも重要で、

美白剤の外用が治療の中心です。

 

肝斑に対するレーザートーニング治療は,

QスイッチNd-YAGレーザーの 低出力照射によって

メラノサイトを破壊することなくその機能・活動性を低下させることが

主たる作用機序3)であり、

肝斑に対するレーザートーニング治療は

病態としての 肝斑を治癒させるものではなく,

あくまで一時的な軽快 を得るための治療法として有用であると

宮田らにより報告され4)、適切に使用すれば

症状を軽減する可能性が示唆されています。

 

ただしレーザートーニングにはPicoトーニングも含めて

葛西や渡辺ら否定的な見解もすくなからずあり 5)

 

その効果や影響は経過を見て慎重に判断する必要があります。

 

※私はこの効果を否定するものではありませんが、

当面、当院(未開院では肝斑に対するYAG toningは見合わせることといたします。

 

肝斑はその他のシミとしばしば合併することがあり、

肝斑にQスイッチレーザーを当てると逆にシミが濃くなることがあると書きましたが、

この場合は肝斑の治療を優先するのが原則です。

正しく診断し正しい順序で治療を受けないと

むしろ一時的に悪化することさえありますので注意が必要です。

 

[4] 遅発性両側性太田様色素斑/

後天性真皮メラノサイトーシス

(ADM/FDM; acquired/ facial dermal melanosis)

ADM/FDM


10~30歳代の女性にみられる、顔面の頬骨部や両側の額部、鼻翼部にみられる

淡い褐色から紫褐色の島状の色素斑で、真皮内にメラノサイトが増えた状態です。

 

肝斑とは異なりレーザー治療が高い効果が見込まれます6)

 

一方でただしくADMと診断されず肝斑と混同されていれば、

何度も効果の緩やかな治療を受けるケースもあるかもしれません。

 

 

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以上述べましたように、〝シミ〟も病態や治療が様々で

診断と治療は必ずしも簡単ではありません。

 

〝シミ〟のうち最も多い老人性色素斑や後天性真皮メラノサイトーシスであれば

Qスイッチレーザーがよく効くのですが、これもさまざまな機種があるため、

正しい診断のもとに有効性の高いレーザーを用いることが望ましいでしょう。

 

また、特にシミとしてもっとも多くみられる老人性色素斑に対して

美白外用剤はさほど治療効果が高くないと報告されていることは

知っておいてよいかもしれません。

 

 

肝斑と後天性真皮メラノサイトーシスはまったく異なる病態ですが

合併することもありますので、

正しい診断のもとに正しく治療を受けることが大切です。

 

美容の領域にはさまざまな治療がありますが、

 

その症状の病態や病理病態学見地から

どの施術の必要を選択しているか深く理解された専門家かどうか、

正しく病態を把握し病名を診断できているのか、

どのレーザー光がどのように作用しシミを薄くするのか

 

治療を受ける側は吟味して

治療を受けるクリニックを見極める必要があるかもしれません。

 

たくさんの種類と病態がある〝シミ〟を正しく理解、診断していただき、

適切な診療を受けきれいな肌を取り戻していただきますよう願っています。

 

※この文章に書かれた内容と経過は筆者の経験と知識に基づいたもので、

必ずしもすべての症例に当てはまるわけではありません

 

【参考文献】

1) 渡部晋一: 日皮会誌, 129: 1619-1625, 2019

2) 川口雅一: 日皮会誌, 129: 2125-2135, 2019

3) 中野俊二: PEPARS, 110: 53-58, 2016

4) 宮田成章: 日本レーザー医学雑誌, 39: 137-140, 2018

5) 葛西健一郎: 日皮会誌, 129: 1627-1632, 2019

6) 鈴木春恵: 日本レーザー医学雑誌, 31: 30-35, 2010

 

 

以上です。

ではでは、みなさま良いおやすみをおすごしください。

 

さぁー、きょうもがんばりますぞ!