Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

【美容】レチノイドの使用法

おはようございます✨

 

紙屋町やなせ皮ふ科クリニック 院長のやなせです。

 

開業して10日間経過しました。

 

自分の中では保険診療アトピーや湿疹、乾癬、ニキビ治療のかた)と

自費診療(美容、レーザー)比率は8:2くらいかなと思っていたのですが

地域柄からか、美容施術希望の患者さんは3-4割程度おられ

ホクロ除去、シミ治療、若返りレーザー希望などの患者さんがかけっこうおいでです。

 

なかでも、シミ治療は判断を誤ると悪化する可能性があるため

注意深い診断と治療方針を行っています。

 

以前、【シミの治療】についてまとめたのですが

www.family-dr.jp

繰り返しになりますが、一口に〝シミ〟といっても

①SL:日光黒子(老人性色素斑)

②ADM/FDM(両側性遅発性太田母斑)

③肝斑

④雀卵斑

⑤PIH:炎症後色素沈着

など多数あり、最も気を付けなければならないのは〝肝斑〟の合併です。

怖いのは、潜在的な(現在はっきりとしてない)肝斑であっても

SLにレーザー照射をするとPIHが一時的に濃くなる可能性があって

肝斑を合併したかたには

僕はハイドロキノンとレチノイド(トレチノイン)の併用を数か月行ってからの

レーザー治療をお勧めしています。

 

HQは以前書きましたので(☟下記ご参照ください)

【美容】美白治療! HQ:ハイドロキノンについて - Yanase Derma’s Diary

本日はレチノイドの使用法について書いていきます。

 

先にまとめ。

・当院で現在使用している製剤は0.1%トレチノインオイルジェルです。

・レチノイドはビタミンA群の総称で、メラニンを排出し肌の若返り作用があります。

・妊娠中はご使用になれません。

・特に肝斑合併例について、ハイドロキノンとトレチノインの併用療法を推奨します。

・濃いシミには全顔にHQを塗布し、トレチノインをスポットで外用しましょう。

・全体に淡いシミがある場合化粧水でトレチノインを希釈しHQとともに全顔に塗布しても構いません。

・トレチノイン治療期間は4週間とし、のこりの4週はHQを外用しましょう。

・トレチノインには、赤み、かさつき、ひりひりという合併症が高い頻度で起きます。あまりに症状が強い場合は間隔をあけて使用するか、外用後しばらくして洗い流してください。

・8週間を1クールとして、2か月間トレチノインの休薬期間を設けて再度行ってもよいでしょう。

 

レチノイドについて

レチノイドはVitAおよびその誘導体の総称で、

紫外線により生じた小じわ、シミなどの(いわゆるフォトエイジング:光老化)

日光暴露による構造的変化を生じた皮膚の改善に役立ちます。

 

その作用機序はちょっと難しいのですが

レチノイドには

細胞の分化増殖を抑制するはたらき、免疫細胞に対する抗炎症作用があり、

角質細胞に対しては分化増殖抑制、皮脂分泌抑制、表皮内メラニンの排出、光老化の改善、真皮コラーゲンの産生促進、細胞のがん化抑制などのさまざまな効果が認められています。

かんたんに言うと

メラニンを排出しコラーゲンの産生を促す、若返り外用剤といえます。

 

にきびのお薬であるアダパレン(ディフェリン)もレチノイドの一種であり、

角質のつまりを取り除く働きがあるのですが実はアダパレンにも皮膚の若返り効果もあると報告されています。(Eur J Dermatol. 2018 Jun 1;28(3):343-350.など)

ただし、アダパレンはニキビ治療外用薬ですので、ニキビの薬としてしか処方いたしません。

 

外用レチノイドで気を付ける点は

・妊娠中は禁忌 という点でしょうか。

内服レチノイドには催奇形性があるため絶対禁忌ですが、外用剤では数10gの経口摂取(!しないよね)をしないと影響はないとされています。ですが一応禁忌です。

 

【対象疾患】

シミ全般;日光性色素斑,肝斑,炎症後色素沈着 いずれも有効です。

 

【治療プロトコル

塗布期間は4~8週間とされていて、

1) 漂白期間:4週間

トレチノインゲル,HQ軟膏を併用し,

局所に存在する色素の積極的な漂白を図る時期

2) 治癒期間:4週間

トレチノインゲルによって起きた皮膚炎による炎症後色素沈着を残さないように,

HQ軟膏塗布を継続する治癒期間

 

とを分けて,継時的な治療をすすめる方法が提唱されています。

 

 

【塗布方法】

洗顔または入浴後、

①十分にお顔を保湿

②HQを全顔に塗布

③トレチノインは1日1~2回 シミの部分にスポットで外用する。

ことが基本なのですが、

 

全顔に色素斑がある場合は

0.1%トレチノインジェルを化粧水で希釈後

全顔に塗布してから気になる部分にHQを外用する

方法もあります。

 

【治療経過】

トレチノインゲルを塗布後、程度の差はあれ

「紅斑:あかくなる」「鱗屑:かさかさする」「刺激感:ひりひりする」

という副反応が出てきます。

「わずかにピリピリする」程度の作用を継続するのが良いと思われます。

・色素斑が改善し赤みだけの症状になればトレチノインを中止し

HQだけの治療にしたらよいでしょう。

またはレチノイドを短時間外用し、洗い流す方法でもよいでしょう。

・4週間トレチノイン+HQ、その後の4週間HQ外用療法を1クールとして、

トレチノインはトータルで2か月間休薬後、同じクールを繰り返してもよいでしょう。

・とても日に焼けやすく紫外線感受性が増しますので、

丁寧な日焼け止めの外用をお願いします✨

 

日焼け止めの選び方と使用法についてはまた日を改めて書こうとおもいます。

 

とりあえずこのくらいでしょうか、

さて、今日はおやすみですがラジオ収録と乾癬の講演会座長があります、

また告知致します、

よろしくお願いします🌞

 

 

 

※この文章に書かれた内容と経過は筆者の経験と知識に基づいたもので、

必ずしもすべての症例に当てはまるわけではありません。

適宜内容に関しては改定・修正をする可能性がございます