Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

【論文抄読】ニキビ治療の最新論文 システマティックレビューのメタ解析【美容】

おはようございます。

3~4連休も終わりましたね🍁🍂

 

わたしは土曜日が仕事で日月休みですので

日曜日夕方のいわゆる〝サザエさん症候群

(翌日から仕事が始まるため月曜日をゆううつと感じ日曜日の夕方から抑うつ気分となる症状)

がありません。ンガフフ。

 

もう一日休みです ٩(ˊᗜˋ*)و*サーセン

きょうは最近着手した乾癬の新規論文のデータ整理を行います。

 

 

おおお~😢 休みの日も仕事だって!

さて、

医師のみがあつまるオンラインコミュニティ情報交換掲示

というものがあるのですが

そこで、ざ瘡(にきび)治療の論文が出ていたため

目を通してみることとします。

 

 

医学論文でもっとも情報が信頼できるものに

ステマティックレビュー(系統的レビュー)〟

というものがあります。

 

研究論文を系統的に検索・収集し、

類似した研究を一定の基準で選択・評価したうえで、

科学的な手法を用いてまとめること、とされています。

 

ステマティックレビューの模式図 https://minds.jcqhc.or.jp/より引用

 

さらにシステマティックレビューでも,

バイアス(かたより)の評価を定性的に評価し,

定量的に統合できるか異質性(heterogeneity)を検討し、

効果指標の値を統計学的に統合し,統合値と信頼区間を計算し,

定量的統合を行うことをメタアナリシスとよびます。

 

論文の中でも、

ステマティックレビューのメタ解析 のエビデンスレベルは高いとされます。

 

 

研究デザインとエビデンス

 

 

本題に入ります。。。

 

下記論文を抄読します

(皮膚科医向けですので読み飛ばして結論だけご覧ください)

British Journal of Dermatologyは権威ある雑誌です
 Br J Dermatol . 2022; 187(5):639-649.

【対象】

49の治療クラスにわたり、約35,000の観察を伴う179のRCT(randamized control trial:ランダム化比較試験)を対象とした。

【結果】

 

[1] 軽度から中等度のにきびに対して、各治療タイプで最も有効な選択肢

1)レチノイドと過酸化ベンゾイル(BPO)の併用

[平均差26-16%、95%信頼区間(CrI)16-75-35-36%];

2)ケミカルピーリングサリチル酸など

(39-70%、95%信頼区間(CrI)12-54-66-78%)、

3)光化学療法(青色光と赤色光の併用)

(35-36%、95%信頼区間(CrI)17-75-53-08%)。

〇経口薬理学的治療(抗生物質、ホルモン避妊薬など)は、バイアス調整後では効果がないようであった。

BPOおよび局所レチノイドはプラセボよりも忍容性が低かった。

 

[2]中等度から重度のにきびに対して、各治療タイプで最も有効な選択肢

1) レチノイドとリンコサミド(クリンダマイシン)の併用

(44-43%、95%CrI 29-20-60-02%)

2) イソトレチノイン(国内未承認)

(1クールあたり累積投与量120mg kg-1以上)(58-09%、95%CrI 36-99-79-29%)

3) 光線力学的療法(光感作性化学物質により増強された光線療法)

(40-45%、95%CrI 26-17-54-11%)

4) 併用療法-BPOと局所レチノイドおよび経口テトラサイクリン

(43-53%、95%CrI 29-49-57-70%)。

〇局所レチノイドと経口テトラサイクリンはプラセボよりも忍容性が低かった。

 

【結論】

 

[1]軽度から中等度のにきびに対して

局所薬理学的治療(レチノイド、BPO)の組み合わせ、

ケミカルピーリング

光化学療法

が最も有効

 

[2]中等度から重度のざ瘡に対して

局所薬理学的治療(レチノイド、BPO)の組み合わせ、

局所薬理学的治療(レチノイド、BPO)と組み合わせた抗生物質の経口投与

イソトレチノインの経口投与(本邦未承認)

光線力学的治療

 

が最も有効であった。

 

ケミカルピーリング、光化学療法、光線力学的療法については、

エビデンスが限られており、さらなる研究が必要である。

 

※光線力学療法の赤外線光もかなり有効性高いのですね・・・

導入するか検討中です。

 

ネットワークメタ解析結果 

本研究の結果からは

本邦のガイドラインの結果と同様になりました。

 

レチノイド(アダパレン;商品名ディフェリン®)、

BPO(過酸化ベンゾイル製剤;商品名ベピオ®)、

抗生剤外用薬(テトラサイクリンやクリンダマイシン;ダラシン®)、

 

などは医師の診断、処方が必要で市販では手に入りません。

 

また、特に大切なことは

標準的治療薬を処方するなら医師ならだれでもできますが

その有効な具体的な使い方と副作用のご説明、

副作用が起きたときの対処法、リカバリーの方法、

また通常の治療でうまくいかない時の治療法の対応まで

説明、対応できる医師が良い医師かどうかの判断基準かもしれません。

 

(ちなみに市販薬のテラ・コートリルはステロイド入りなので全顔塗布は避けるべき、

他の市販抗菌薬はC. acnesに推奨されるものはほとんどありません

 

ひるがえって、

現在本邦においてにきびの患者さんは実際に同院治療をしているかというと

川島眞 痤瘡とその対処方法に関するインターネット調査 日臨皮会誌:34(6),732-741,2017

医療機関を受診されるのはわずかに2割弱、

 

25~33%の患者さんは「市販品や化粧品」、

「自分でつぶす」ひとが25%

洗顔を心がける」ひとが50%

「食生活の改善」が15-20%で医療機関受診とほぼ同数!

(食生活の改善はエビデンスが乏しいです)

 

と正しい治療をしておられるかたは非常に少ないことがわかります。

 

youtubetiktokをちらっと見る限り

ときに不正確で心配な情報を流していることもあるかもしれません。

 

 

特に自分でつぶすのは瘢痕の原因となります(やっちゃいたくなりますけどね)。

 

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=Nz7ESDaV32U つぶしちゃだめよ

 

洗顔も正しく保湿を行わないと乾燥してしまい逆効果です。

 

 

同上、患者さんが医療機関を受診されない理由

 

みなさまのアンケート結果を見ると

いつか治ると思って、また受診が面倒だから受診されないということがわかります。

 

当院では軽症から中等症~重症の患者さん、

また瘢痕に対しても積極的な加療をおこない、

多くの方は数か月~半年程度でほとんどの方が改善しておられます。

写真はご本人の許可をいただきinstagramで発信する予定です。

 

正しい治療で早くにきびを治したいですね。

さてさて、では今日もいちんち頑張りましょう~~👋