Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

広島平和の日 【皮ふの病気について】ガングリオンと血管炎

みなさま、お暑いですね🌞🌞🌞

 

 

 

本日は日曜日、おやすみですが 8/6広島平和の日です。

広島では恒久の平和を祈り戦争で犠牲となった方々の御霊を慰めるため

朝から平和祈念式典、そして夜には元安川に灯篭流しが行われています。

 

NHK広島より引用

世界は平和であり、水と平和はただ当たり前にそこにあるもの、

という日本においては忘れがちながら 至極当然とされる概念は

ウクライナ紛争を目の当たりにし当然の概念ではないことが証明されました。

 

平和とは

各国の不断の外交努力の結果であるのでしょう。

 

改めて

国家の最高法規である日本国憲法、その第九条に目を通してみます。

 

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


CHAPTER II. RENUNCIATION OF WAR
Article 9. Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized

 

国際平和が、

中国や台湾、朝鮮などを包含するこの不安定な東アジアにおいて

本当に正義と秩序を基調しているものか議論はあるかもしれません。

また、〝陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない〟という条文の解釈は

昔より議論のあるところです。

ただここでは議論いたしません。

 

 

ただ、世界が平和でありますように。

May the world be at peace.

 

そのためには 

まず自分の足元をしっかりしないといけません。

稚拙かもしれませんが、

家族や自分を取り巻くまわりの人々が 

まず平和であるように

そのように行動してまいりたいと思います✨

 

修身斉家治国平天下 という言葉があります。

 

天下を治めるには、

まず自分の行いを正しくし、

次に家庭をととのえ、

次に国家を治め、

そして天下を平和にすべきである。《「礼記」大学から》

 

ということです。

政治がすべきことは政治家に任せ

まずは私自身ができることに専念すべきだと考えています。

 

さて、前置きが長くなりました。

 

みなさま

夏休みのお子様や学生さんを除けば明日からお仕事ですね。

 

やなせは月曜日を休診日としていますので明日もお休みで

明日は大阪、あべのハルカスでご開業のつかはらクリニックの塚原先生のもとへ

勉強に参ります。学んだことは自分の知識と技術アップデートにしたいと思います。

また、夜は安佐市民時代にお世話になった膠原病内科医の先生とお会いする予定です。

 

 

さて、最近ご来院いただいた患者さんの治療経験を通じて

みずからの学んだ症例について知識と理解を深めたいと思います。

 

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[1] 30-40代女性 手首の皮下のしこり

 

これは患者さんに不利益を与えてしまい

深い反省をもって症例の復習にあたります。

手首のしこりで来院いただいた女性の方です。

発症時期は不明なるも手首にしこりができたとの主訴で来院なさいました。

触診上はでは手首から手掌の、てのひらがわの皮下腫瘤です。

 

柔らかく触れる3*2cm大程の軟性皮下腫瘤でしたが、

エコー像では周囲に血流の乏しいlow echoic massとして認識されました。

 

一様にlow-echoでしたのでガングリオンを考えました。

ガングリオンは関節包や腱鞘(けんしょう)に粘液がたまってできる囊腫で、

ゼリー状の液体が詰まっています。

手術をしても再発することが多いですので、一般に穿刺排液で治療されます。

患者さんには、エコーではガングリオンが最も疑われること、手術をしても再発することが多く穿刺で対応しますとお伝えし試験穿刺をおこなったのですが・・・

 

排液がみられない!!

 

エコー像を改めてみると後方陰影の増強に乏しく

脂肪腫としても矛盾はしないことを確認しました。

患者さんには

 

「エコー画像の結果と発症部位よりガングリオンを最も考えたのですが、

穿刺結果とエコー像の再検では脂肪の塊である脂肪腫であった可能性が高いです」

 

とお詫びをお伝えし穿刺手技を終えました。

 

脂肪腫であれば徐々に腫瘍は大きくなりますので、

MRIで検査して摘出手術ができる病院をご紹介したほうが良いと思います。」

とお伝えしましたが、ご予約はお取りになられず帰宅されました。

 

 

私たち医師は診断と治療を兼ねて容易に試験穿刺を行ってしまうのですが

あらためて

患者さんの不利益になる、また痛みを伴う手技では

その治療の妥当性、また得られる結果が求められない可能性があるときには

そのメリットデメリットをあらかじめ説明し納得いただいてから

実施する必要性を痛感いたしました。患者さんには申し訳ございませんでした。

ガングリオンエコー像 海外サイト hand surgery より引用

ガングリオンでは内部は一様な液体ですので無エコー領域となります。

また内容物が液体では後方陰影の増強(白っぽくなること)がみられます。

Liposarcoma: low-grade myxoid recurrent. Ultrasound image (A) shows ...

       脂肪腫エコー像 pitnarestより引用

脂肪腫では内部に脂肪織は無エコー像に近いですが

よくみると線維性の隔壁がわずかでもみられます。

この画像上は判断が難しいですが一般に後方陰影の増強はみられないとされています。

 

手首に脂肪腫ができるなんて珍しいのですが

忙しい外来の中でも丁寧なアセスメント(分析/解析)と即座での丁寧な判断が必要です。

患者さんが拙ブログをご覧になる可能性は低いかもしれませんが、

改めてこのブログ内でお詫び申し上げます。

 

[2] 下腿の紫斑

 

ウオノメでかかりつけの60代男性ですが、

 

下腿のしこりを触れない点状紫斑がみられるようになったとのこと。

下腿に点状のあかい紫斑を散見しました。関節痛や腹痛などの全身症状はありません。

しばしばゴルフに興じる元気な男性ですし、臨床的に単純性紫斑を疑い

 

①ビタミンC(血管強化薬、色素沈着の消退をうながす)

②トラネキサム酸(止血、抗炎症薬)

③アドナ(止血薬)

ステロイド外用薬

 

を処方しました。

念のためIgAをふくめた検査と検尿検査を実施しました。

すると、

採血結果でIgAが400代と中等度高値、また尿たんぱく陽性の結果をみとめました。

なんと、いわゆるIgA血管炎(ヘノッホシェーンライン/アナフィラクトイド紫斑病)

だったのです。

 

dapsoneを追加のうえ、安静、水分摂取の励行を勧めました。

まだ再診しておられませんが、採血検査を実施してよかったと思いました。

 

IgA血管炎について簡単にまとめます(医療者向け)。

 

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血管炎は病因(発症要因)から、
1) 免疫複合体(IC: immune complex)が関連する血管炎(ICV; immune complex vasculitis)
2)  抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)関連血管炎
3)  病的自己反応性T細胞が関与する血管炎
4)  その他の血管炎
に分類されます。
ICVは血管炎全体の70%を占めます。IgAVは1)ですね。

 

 IgA血管炎Henoch-Schonlein purpura(HSP): IgA vasculitis (IgAV)

【疾患概念 Concept】
・腎障害;高度蛋白尿、尿潜血
  1g/日の蛋白尿、高血圧などのネフローゼでは腎臓内科紹介
・関節症状:歩行困難:XⅢ因子精査
・血圧、腹痛、などがあれば入院の適応。
腹部症状:十二指腸、小腸>結腸>胃

検査所見CRP.ESR.白血球増多、XⅢ因子は疾患活動性を反映する
【治療 Treatment】
・関節痛:NSAIDs
・DDS(Dapsone;レクチゾール)紫斑、関節症状、腹部症状に効果があるとされる
ステロイド全身投与は病初期の紫斑を抑制するが、長期効果はないとされ、腎障害発症の予防効果もないとされる

IgAV治療の考えかた

本日は以上です。

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さて、のちに明日勉強に伺う塚原先生に失礼のないように

ボトックスの予習と、

塚原先生の上梓されている脱毛の本について復習して明日臨みたいと思います

(塚原先生は脱毛学会理事長です)

 

では、すこし元安川原爆ドームまで夜のジョギングをして

平和の夜をかみしめたいと思います。

 

追記)下記、やなせがジョギングしてきて撮影した写真を追記します。

2023.08.06. 元安川からながむ原爆ドーム

2023.08.06.元安川を彩る灯篭流し

(上記2点 やなせのiphoneで撮影した画像より)


ではでは、みなさまおやすみなさい🌕⭐