みなさまおはようございます。
昨日は聖マリアンナ医大教授の
門野岳史先生がはるばる広島においでで
悪性黒色腫の臨床診断と最新の治療についてご講義頂きましたので
自分用に復習を兼ねて書いていきます。
前半は一般の方向け、後半は専門家向けです。
門野教授は東京大学の理科3類という日本の医学部の最高峰のご出身で
おそらく皮膚科では比較的珍しい皮膚外科学に精通された教授のお一人です。
虎の門病院にもいらしたことがあり、
ずうずうしく書かせてもらえれば私の兄弟子にあたる方です💦
虎の門病院は当時、大原國章部長という
悪性黒色腫やPaget病に関しては当時日本で最も多くの症例を手術されていた
いわゆる〝神の手〟の皮膚外科・皮膚悪性腫瘍の権威がおられました。
虎の門病院を副院長まで勤め上げられ、
現在は赤坂虎の門病院というクリニックで勤務しておられます。
皮膚科(皮膚癌/アトピー/ほくろ)|診療科目|赤坂虎の門クリニック
昨年西日本の皮膚科学会で10年以上ぶりにお目にかかりご挨拶したのですが
覚えていていただきうれしく思いました。
虎の門出身で教授になられたのは私の知る限り
聖マリアンナの門野岳史教授と埼玉医大の中村泰大教授がおられます。
さて、本題です。
悪性黒色腫(メラノーマ)は
黒いホクロのようなしみのようなものなのですが
左右非対称なのが特徴です。
heterogenuity(不均一性)というのですが、
悪性の細胞は様々な特徴や遺伝子変異があるため
さまざまな方向に拡がり また増える細胞もあれば消える細胞もあったりと
見た感じが明らかに悪そうです。
あきらかに悪そうですよね。
こういうのがあったらすぐに病院へ行くべきです。
ただ、初期ではホクロと見分けが難しいことがあります。
とくにメラノーマは稀ですが比較的若年層の20代や30代から発生することもあり
(私も若いころ何人かの若いメラノーマ患者のかたを担当しました)
気をつける必要があります。
ホクロが心配で来られた患者さんには
拡大鏡(ダーモスコピー)を用いて確認し悪性所見が一つもなければ
「大丈夫ですよ」とご説明しています。
患者さんには以下のように説明しています。
「子ネコはネコになるし、小トラはトラになります」
「子ネコが大きくなってトラになることはありません」
「トラになるものは子供のころからトラの特徴がすこしでもみられます」
(よいものは時間がたってもよいまま、悪いものは最初から悪いものの特徴がある)
「とはいえ、例外もありますので、〝急速に大きくなるもの〟〝盛り上がるもの〟〝左右非対称なもの〟などは気をつけ、ご心配でしたらまた来院ください。」
といって、悪性黒色腫の臨床像のお写真をお見せし、
必要時、また不安でしたら来院いただくように促しています。
メラノーマの発症率は日本では10万人当たり2人くらいと
白色人種に比べてはるかにすくなく
基本的にさほど心配はいりません。
ただ、いくつかの特徴があり古くからいう
ABCDE rule
A: asymmetry 左右非対称
B: border irregurarity 辺縁の不均一性
C: colar variegation 色調の多彩さ
D: diameter ≧6㎜ 直径が6mm以上
E: enlargement/elevation 拡大傾向/もりあがり
などの特徴がみられたらメラノーマを疑います。
これらやダーモスコピー(拡大鏡)、
必要に応じて病理組織検査
で診断をおこないます。
黒いできものが心配な患者さんでしたら
これらの特徴がみられるようでしたら
お近くの皮ふ科を受診ください。
ただ、黒色病変は必要に応じダーモスコピーで検査をした方が良いですから
その検査所見を丁寧にご説明してくれる先生でしたらより安心ですね。
昨日のまとめですが
・(老人性疣贅でみられる)コメド様開孔がみられるメラノーマがある
以下、別論文より転記・・・
さすがにこれは専門家からすれば肉眼でメラノーマの診断は簡単ですが
門野先生が出された症例はとても難解で
「一見すると老人性いぼ(脂漏性角化症)」と見分けがつきにくい症例でした。
専門家はたくさんの症例を繰り返し見て診断しておりますので
いざ悪性腫瘍にあたったとき
「なんとなく悪いような違和感」を感じることが多いです。
これは
「病変を悪性の可能性があるとうたがい」「検査し」「摘出し病理学的に確認」
という一連の診断治療を繰り返すことによって
はじめて身につくものだと思います。
上記はいずれも老人性いぼと間違えそうなメラノーマとして
論文紹介されてます。
上記は左がメラノーマ、真ん中がdysplastic nevus、右が老人性いぼです。
専門家なら明らかなんですが、
左のメラノーマに違和感を覚え適切に紹介できない医者でしたら
イボ治療を含めてこれらの疾患を取り扱う資格はないといえます。
(メラノーマは診断を間違えると患者さんは致死的経過をとります)
メラノーマはわたしが若いころ、20年ほど前は
DAV-feron療法という化学療法が主体で
結果は十分得られなかったのですが
現在は
免疫チェックポイント阻害薬:ICI や 分子標的阻害薬:BRAF/MEK
(PD-1抗体製剤、BRAF/MEKi)という夢のような薬が出ていて
一昔前でしたら決して助からないような患者さんの生存率は劇的に改善しています。
昨日の門野先生のお話では
進行期メラノーマの場合
・BRAF変異がなければICI、
・BRAF変異があった場合、ICI ⇒ BRAF/MEK がおそらくもっとも予後が良い
とのことでした。もちろんケースバイケースだと思いますが。。。
とはいえ、開業医レベルでは
いかにいぼといってこられる患者さんの中に紛れている
ほんものの悪性腫瘍を見逃さないか
その診断が必要だなと痛感しました。
ではでは・・・