おはようございます。
本来ですと、本日2021.09.12に下記ハーフマラソンに参加予定でした。
ニューハーフマラソンじゃないですよ。
緊急事態宣言のもと、4/12に行われるのが本日9/12に順延され、
それもまた12月に順延です( ;∀;)
40代ですが(加齢にさからうべく)走ります!
今朝もオッサン同士(笑)でRUNしてきます。
そのかわり、2018/4よりアトピー性皮膚炎に使用されるようになった
デュピルマブ(DUP:デュピクセント®)という
画期的なお薬のWEB講演会があるので聴講予定です。
デュピルマブについては後日またまとめてみようと思います。
そういえば、9/14に呉皮膚科医会の講演演者にお呼びいただいており
これはまた内容をupします。
さて
本日はステロイド軟膏の使用法について書いてまいりたいと思います。
先日のブログでも書いたのですが、
「ステロイドを女性の顔面に塗れば塗るほど悪化した」との症例が
ザ・仰天ニュースで放映され大きな議論を呼びました。
facebookにもブログを転載したところ先生を中心として反響があり、
日本皮膚科学会でも対応いただけることを学会理事の教授が教えてくださいました。
ステロイドは諸刃の剣で、使用法によっては副作用がありますので
専門家によって適切に使用されるほうが望ましいです。
医師の指導を逸脱した使い方は
です。
先にマトメを書きます。
#1 ステロイドの目的はあかみ、かゆみなどの炎症を抑えること
#2 長期強いステロイドを連用すると皮膚が薄くなったり、顔面がまっかになる酒さ様皮膚炎とか、毛が濃くなる(多毛)、あざができる紫斑といった副作用がある
#3 初期に強いステロイドでしっかり押さえ、徐々に外用回数を減らす
#4 改善後もプロアクティブ療法という間欠的外用法により再燃を防ぐ
#5 通常の治療が奏効しない場合、デュピクセントなどの全身療法が適応となる
1)ステロイド軟こうの目的
ステロイドは、昨日のブログ
ステロイドの使い方のすべて その歴史と作用機序、副作用、つかいかたについて - Yanase Derma’s Diary
でも書きましたが、
① 強力に炎症を抑えることができる 一方で
② 免疫を抑制します
ので、ざ瘡(にきび)や細菌/ウイルス/真菌感染症その他の副作用には留意が必要です。
全身投与に比較し、局所に外用したほうが全身に与える影響は少ないです。
ただし、
皮膚の状況(炎症が強く皮膚菲薄化がみられる)や
内服薬の併用(皮膚を薄くする内服薬:チガソン®など)などにより
strongestの軟膏を全身に塗布するとプレドニン換算10mg程度全身投与に匹敵することもあり、可逆的ですが6か月以上の投与で副腎機能低下を起こすこともありますので注意は必要です。ただし、strongestを全身に塗布し続けるケースは限られます。
2) ステロイド軟こうの分類
たとえば以下のものがあります。
(鳥居薬品さんによる患者さん説明用提供資材を引用)
使い分けは、重症度に応じ、部位によって使い分ける ということです。
以下にアトピー性皮膚炎ガイドラインと、筆者により作成したスライドを添付します。
Feldman. R.J. and Maibach, H.I.: J. Invest. Derm., 48, 181, 1967を改変
日本皮膚科学会HPより引用
顔面は腕と比較して吸収がざっと10倍(陰部は40倍も)違いますので
例外もありますが吸収がよい顔面や陰部部位には弱いステロイドを処方します。
逆に膨れ上がったような(浸潤性紅斑といいます)紅斑や炎症が持続し硬くなったような皮膚(苔癬化皮膚)など重症部位にはベリーストロングやストロンゲストを使用しますが、症状の改善とともに外用回数を減じたり徐々に弱めたりします。
3)ステロイドの塗り方
アトピー性皮膚炎にかぎらず、湿疹病変には
適切な強さのステロイドを適切な量だけ、適切な期間に限って外用します。
① 塗布量
もうおよそどこの皮ふ科に行っても指導される内容だと思います。
FTUコンセプト(finger tip unit)といって、指の第1関節から先までの量の軟膏が
一般的に0.5gとされ
(実際には軟膏の口径によって異なり、ステロイドでは0.2-0.3gとされています)
手のひら2枚分塗布します。
ローションでしたら1円玉の大きさが0.5gとされ、同様の範囲に外用くだされば大丈夫です。
塗布量が十分でないと確かな効果が得られません。
また、皮膚のシワ(RSTL: relaxed skin tension lineといいます)の方向に沿って
優しく塗布する必要があります。
実際に患者さんに塗ってみてもらうと、ごしごしとこするように塗り込んでおられたり、塗布量が少ないなど
必ずしも正しい使用がなされていない場合が少なくありません。
(以下に作成したスライドを添付します)
② 塗布する期間
悪化時期には1日2回、改善とともに1日1回を上記述べた十分な量塗布します。
1回と2回ではさほど大きな差はなく、3回以上塗っても有効性に差はないとされています。
症状の改善とともに外用回数を徐々に減らして中止しますが、よくなったと思ってもまだ炎症が残っていることが多いですので、よくなったと判断してからも数日は塗り続け、慢性的な病態であれば間欠的に外用することをお勧めします(以下に私が講演で使用する作成スライドを添付します)。
患者さんから「ステロイドを塗ってもよくなりません」という訴えがあります。
その場合
① ステロイドの外用量や外用期間が十分でない可能性がある
(医師指導が不徹底であり外用法の再説明を要します)
② 炎症を抑える以上にひっかいてしまうなど悪化因子の除去ができていない
(悪化因子の除去が十分ではないこと)
③ 外用のみでは炎症のコントロールが不十分
(内服や注射など更なる全身療法の併用が必要)
な可能性が考えられます。
4) ステロイド軟こうの副作用
1990年代ステロイドが忌み嫌われた時期があり、
当時の皮膚科医は適切な外用法といかに上手に副作用なく使うか、
対応に苦労したといいます
(ただ、一部の医師によりなされた不適切な使用により不幸にも酒さ様皮膚炎など外用による副作用により苦しんだ患者さんが少なからずおられたことも事実でしょう)。
以下にステロイドバッシングの呼び水となった
久米宏氏がニュースステーションで報道した内容のまとめを書きます。
(以下筆者作図スライドを引用)
ステロイド外用の副作用には以下のものがあります。
・にきびや毛のう炎の悪化、新生
・多毛、皮膚が薄くなる
・ステロイド紫斑
・酒さ様皮膚炎(顔面が真っ赤になる)
・副腎不全(まれ)
(以下筆者作図スライドを引用)
その多くは局所的なもので、適切な外用指導により コントロール可能で
その多くは可逆性のもの(やめれば治ります)です。
ただし、皮膚線状という皮膚が避けたような瘢痕をきたした場合これは不可逆的です。
外用により改善が不十分な場合、シクロスポリンや新薬のJAK(ジャック)阻害薬(オルミエント®など)の内服、デュピクセント®の注射というあらたな選択肢があります。
これは日を改めてまた書きますね。
本日は以上にします、
最後まで読んでいただいた方ありがとうございました
m(__)m
免責事項:上記内容は筆者の各文献資料のまとめによりますが筆者の私見によります、実際の使用にあたっては主治医の先生の判断を仰いでくださいますようお願いします
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適宜筆者判断で内容は改訂いたします