肌寒い季節がやってまいりました。
唇もカサカサしてくる季節ですね。
本日は、以下を抄読しいわゆる〝乾燥肌〟〝敏感肌〟についてまとめてみます。
佐伯秀久ら: 皮脂欠乏症診療の手引き, 日皮会誌: 131, 2255-2270, 2021
宮井雅史: 生活環境の変化と敏感肌, 日本香粧品学会誌,:45, 97-105, 2021
高森建二: バリア生涯は難治性かゆみを誘導する, 日本香粧品学会誌: 45,336-343, 2021
乾燥肌は、医学的に
〝皮脂欠乏症、乾皮症(asteatosis)〟
と呼ばれます。
「皮膚表面が光沢を失い、粗造になった状態」のことを称し、
「粃糠様の鱗屑(かさかさした粉)および浅い亀裂(ひびわれ)を生じ、魚鱗癬用の外観を呈して搔痒を訴えることがある」(清水宏: あたらしい皮膚科学, 東京, 中山書店,2018, 75.)と成書には記載されています。
【要因causes】
①生理的要因:年齢等による皮ふ生理機能による
・高齢者:皮脂腺や汗腺などの皮ふ機能の低下
・乳幼児・小児:皮ふ生理機能の未成熟
②環境要因:陶器乾皮症に代表される外気や室内空気の低湿度環境
③非生理的要因
・皮膚疾患によるもの:アトピー性皮膚炎、乾癬など
・全身疾患によるもの:糖尿病、慢性腎臓病など
【病態 pathogenesis】
正常な皮ふは、
①角質細胞間脂質 (セラミド、コレステロールエステル、脂肪酸など)
③皮表脂質 (皮脂)
により乾燥から守られています。上記要因などさまざまな因子により発症する皮膚が乾燥した状態をきたします。皮ふのバリア機能の障害という経皮水分蒸散量(transepidermal water loss: TEWL)の上昇により生じ、搔破により更なる皮ふバリアの破綻をきたします。
※皮膚乾燥によるかゆみのメカニズム

【症状 symptoms】
皮脂欠乏症の初期の肉眼的症状は皮膚の乾燥、細かい鱗屑、わずかな落屑で、
症状が進行すると皮膚の粗造化(がさがさ)、鱗屑の大型化(ひどいがさがさ)、落屑の増加がみられます。本症はしばしば瘙痒をともない、搔破痕(ひっかいたあと)や、高齢者では紫斑(紫の出血によるシミ)がみられます。炎症が起きると湿疹化し「皮脂欠乏湿疹」となります。
よく見られる部位は下腿伸側(すね)、背部、上肢もみられます。皮脂分泌や発汗の多い顔面は発症頻度は低いとされています。
【疫学 etiology】
皮脂欠乏症は高齢者では高い頻度で発症することが知られ,高齢者の 7 割以上で皮膚の乾燥が認められているとの報告があります。
【診断・評価 diagnosis/evaluation】
触診や肉眼的評価により重症度、また問診により瘙痒の重症度を評価します。
(European group on efficacy measurement and evaluation of cosmetics and other
products(EEMCO)の基準)


【治療 treatment】
皮脂欠乏症は医療用保湿剤等を用いた治療介入の対象となりますが、生理的要因や環境要因に伴う一過性で軽度の皮脂欠乏症では、医療用保湿剤による治療を要しないこともあり、軽微な鱗屑や粗造のみを認め、瘙痒を伴わない場合には、環境要因の除去や患者指導、セルフメディケーションで対処する、とガイドラインには記載されています。
【治療薬】
保湿剤は以下に分類されます。
①モイスチャライザー:吸湿性の高い水溶性成分を含み直接的に角層水分を増加させる
(ヘパリン類似物質:ヒルドイド®、尿素クリーム:ケラチナミン®、ウレパール® etc)
②エモリエント:水分蒸散を抑え間接的に角層水分を増加させる
【外用方法】
・ヘパリン類似物質を 1 mg/cm2 塗った群よりも 3 mg/cm2塗った群で有意に高い角層水分含有量を示したという報告があります。
・実際には1 回当たりの塗布量の目安として FTU(finger-tip unit)が提唱されています。1 FTU はチューブから軟膏を成人の示指の先端から第 1 関節まで押し出した量(約 0.5 g)で,この量を成人の手の掌側 2 枚分,すなわち体表面積のおよそ 2%とされます。ローションの場合には手のひらに 1 円玉大にとると約 0.6 g に相当します。
・実際には少しテカテカする程度に塗るなどの指導が有用です。
【患者さん説明】
・外用指導、外用状況の確認とともに、入浴方法や、石鹸や洗浄剤などの界面活性剤の過度な仕様や、すすぎ残し、ナイロンタオルやブラシによるこすりすぎなどに留意する必要があります。また過度な日光暴露もTEWLが増加するという報告もあり、夏季の過度な太陽光の暴露は避けるべきとされます。
ということで、適切な時期に適切な保湿が大切、
湿疹化してかゆみを伴えば皮ふ科での治療が適切と考えられました。
やなせ皮ふ科ではお肌の状態に合わせて、適切な指導のもとに十分量の外用剤を処方いたします✨ではでは、一週間頑張りましょう!
※この文章に書かれた内容は筆者の知識や考えに基づいたもので、必ずしも正しい情報ではない可能性があります。また、本ブログ内で書かれた治療は、それぞれ専門家の指示のもと行っていただきますようお願いします。内容に関しては適宜改定・修正をする可能性がございます。