こんばんは、やなせです。
私たち皮膚科医からすると
信じられない内容のテレビ番組が報道されたようです。
2021.09.07 世界仰天ニュース。
要約すると、
・若い女性がステロイドを外用すればするほど顔面皮膚の症状が悪化した
・顔面に塗る薬が効かなくなるため徐々に強い薬に変更し、副腎不全をきたした
・脱ステロイドにより(ステロイドを中止して)いったん劇的に悪化したが最終的に皮疹は改善した
とのことのようです(少しニュアンスは異なるかもしれません )
もうサイトは閉鎖されておりその内容にはアクセスできないようです。
医師が監修していたようですが
その医師(藤澤重樹医師)は脱ステロイド療法で小児皮膚炎を悪化させ
賠償命令を受けたこともあるとのこと。
当地区の皮膚科医師会から回覧メールがきて確認しましたが
今の時代にこのような時代錯誤な内容を放映するテレビ局に愕然としました。
すぐさま、京都大学医学部のもと准教授で 現、近畿大学医学部教授が
遺憾の意を表明し 内容を検証してくださいました。
さすが大塚教授!検証内容が示唆に富んでいて半端ないです。
yahooニュースでも議論を巻き起こしています。
アトピー性皮膚炎にかかわらず、すべての湿疹皮膚炎群にステロイドは極めて有効なお薬です。
ただし、適切に使わないと諸刃の剣になる、その側面は否定できません。
しかしその使用を全面的に否定するのは全く同意できません。
内容にも重大な過誤がありました。
すべての医療はサイエンスです。
思い付きや思い込みではなく
科学的根拠に基づいて理論的に研究され、実践され、データを蓄積され積み上げられきたものです。
私の地域にも脱ステロイドの医師がいますが
ときに患者さんの症状を極めて重篤化させ、こじらせ、病院に紹介されます。
(最重症アトピー性皮膚炎+Kaposi水痘様発疹症の合併)
脱ステロイド医師本人も実はこの方法では治せないことをわかっているのではないでしょうか。
正しい医療の普及を願いつつ
誤った報道に踊らされないような正しい目をもち
医師及び患者の皆さまには治療にあたってもらいたいものです。
以上です、お付き合いいただきありがとうございました。
追記 ) ある皮膚科の先生が「(ステロイド外用副作用による)酒さ様皮膚炎を作るのもまた皮膚科医です。その事実を認めて、この報道内容にも真実がある側面もある」と言ったような内容を述べておられ、確かにそれもあり得るな、と思いました。
私達皮膚科医も過去そのような患者を多く作り、またガイドラインの策定された今でさえ、中にはそのような患者さんもおられることに、謙虚に想いを致す必要があるかな、とも思いました。