Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

初ブログ 論文紹介:妊婦さんに対するコロナワクチン接種

ブログ開設しました。

 

はじめまして。

広島で皮膚科医をしています。

初めてのブログですのでいろいろと心配もありますが

もしよければ寄ってってみてください(*^^*)

勉強した症例や抄読した論文について記載してまいります。

また、あと一年半後に開業も控えていますので 今後その足跡も書いていけたらなと思います。

 

最初から今気になる、賛否両論あるテーマですが

“新型コロナワクチン” についてちょうど目にした論文について記載してまいります。

本日は以下の論文を読み解きます。

mRNAワクチンの安全性に関する報告(N Engl J Med 2021; 384: 2273-2282)

Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2104983

 

New England Journal of Medicine は 

医学雑誌のうちでは世界で最も長い歴史を誇り、また世界で最も広く読まれ、最もよく引用され、最も影響を与えている権威ある英語の査読制医学雑誌です。

内容を以下に添付していきます。

【まとめ】

●妊婦さんは同年代の非妊婦さんと比較して、COVID-19罹患によるリスクが高い。

:COVIDにかかわらずインフルエンザなどの感染症でもいえることですが、妊婦さんは横隔膜が挙上しているため、肺炎になったときのリスクが高いことが知られています。

●米国では13万人以上の妊婦がmRNA新型コロナワクチンを接種済である(2021/07時)

●認可前の臨床試験では妊婦は除外されていたため承認後モニタリングが必要

 

【method:方法】

期間:2020.12.14-2021.02.28

対象:登録のサーベイランスシステムと自発的有害事象報告を用いて

妊娠中に新型コロナワクチンを①or②回接種した人、もしくは接種後に妊娠した人。

乳児は生後3か月まで追跡調査した。

妊娠アウトカム:自然流産・死産

新生児アウトカム:早産、先天性異常、低出生時体重、新生児死亡

【result:結果】

●参加者のうち、35,691人が妊娠を確認 うちrandomに3958人を追跡調査

●妊娠中の人と妊娠していない人とで、副反応の発生頻度は多少の差はあるものの有意差はなかった(局所反応は妊婦に多く、発熱や頭痛などの全身反応は非妊婦のほうがわずかに多かった)

→ 妊婦さんのほうが副反応が高いという結果ではなかった

●827人が妊娠を完了、712人が生児を出産。

 1) 自然流産   12.6%  2)  死産         0.1% 3) 早産    9.4% 

 4) 低出生体重児 3.2%  5) 先天性異常 2.2%    6) 新生児死亡 0

● いずれも自然発生率と有意差なし (以下に自然発生率を示す)

  1) 10-26%   2) <1%  3) 8-15%  4) 3.5%  5) <3% 6) <1%

【conclusion:考察】

●妊娠中のCOVID-19は重症リスクが高い;

妊娠中のコロナ感染は妊婦さんのみでなく胎児にも影響を与えうる

●妊娠中の新型コロナワクチン接種は妊娠経過や胎児に悪影響を及ぼさない

●妊娠中のワクチン接種により抗体は経胎盤移行する

 → 新生児も守られる可能性がある

●妊娠初期にワクチンを接種した人の多くはまだ出産に至っておらず、より長期的な追跡調査を必要とする

 

《本邦における指針》

http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210814_COVID19_02.pdf

・希望する妊婦さんはワクチンを妊娠週数によらず受けることができる

・妊婦さんのコロナ感染の8割はパートナーからの感染であることより、パートナーの早期ワクチン接種が望ましい

 

以上です。最後まで読んでくれた皆さまはお疲れ様でした!

お付き合いいただきありがとうございました。

 

次は機会があれば小児ワクチン接種について 

論文やガイドラインをもとに記載したいと思います。

読んでいただいた皆さまの希望される内容には適宜お応えしてまいります。

よろしくお願いします。