Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

【論文まとめ】VitB3;ナイアシン欠乏症/ナイアシン過敏症

おはようございます。

 

ナイアシンの摂取による過敏症/ナイアシンフラッシュの方がおいでになり

精査を希望されました。

 

当院においても、薬剤過敏症検査

(DLST:患者さんの採血をして薬剤を添加し、アレルギー症状をきたすか調べる検査)

はできるようにしたのですが

 

どの成分によるアレルギーか、などは

くわしくしらべることはできませんので

アレルギー専門医のいる広島大学病院の受診を勧めました。

 

患者さんが当院で詳しく検査できるとおもったのに、とかなり残念がっておられ

私も申し訳なく思いました。

 

 

薬剤のアレルギー反応は私もこれまで様々なものを見てきましたが

多くは抗生剤、解熱鎮痛剤、抗けいれん薬などでときに降圧薬(カルシウムチャネル阻害薬やARBなど)やビタミン剤(VitB12など)でも検査が陽性となることがあります。

 

医師を20年以上やっていますが

ナイアシンによるアレルギーは初めてでしたので大学病院をお勧めした次第ですが

正直あまり知りませんでしたので論文を調べてみました。

本邦でも20例たらずしか報告がありません。

 

2022年にアレルギー学会で報告があります。

ナイアシンにはPG産生を亢進させ毛細血管を拡張させるためいわゆるナイアシンフラッシュをきたすこと、また本症例ではDLST(上述)で陽性であったためⅣ型のアレルギー

をきたした可能性 とのことですね。

ナイアシンフラッシュはしばしば知られているようです

佐賀大学の教授になられた杉田先生がセカンドオーサーの論文ですね。近々発表でご一緒する予定があります。

・ビタミン B3 として知られているナイアシンニコチン酸ニコチン酸アミドの総称)は,生体内で補酵素として働く。

ナイアシン摂取過多時は,頭頸部に血管拡張によるフラッシングを誘発する(過剰摂取によるフラッシングは皮膚ランゲルハンス細胞の PGD2 が関与する)。

ナイアシンの欠乏は,アルコール依存症,薬剤,栄養不良などに起因し,ペラグ
ラ(臨床的特徴は 3D’s(dermatitis, diarrhea, dementia)といわれるよ
うに,皮膚炎,下痢,認知症)に代表される光線過敏症を起こす。

・FAO/WHO によれば,成人男女でそれぞれ 20 mg/day, 15 mg/day のナイアシンを摂取するよう推奨されている

 ナイアシン欠乏による光線過敏症発症メカニズム

杉田先生らはナイアシン欠乏マウスモデルを用いて紫外線過敏のメカニズムを発見されたとのことです。ナイアシンが欠乏するとPGE2が過剰発現するようですね。

 

ではなぜナイアシン摂取が紅斑を引き起こすのか?

矛盾するようですがやはりPGが関与していると考えられます。

 

局所ナイアシン刺激に対する皮膚紅潮反応は、プロスタグランジン、特にプロスタグランジン E2および D2.3 によって媒介されることが実証されています。 

 

とのことで、ナイアシン摂取による潮紅反応はPGが関与し、その発症には個体差があるのではないかということが判明しました。

 

アレルギーの有無を詳しく調べたいしたいという場合

どこまで調べることが目的なのかご本人の意思を尊重し傾聴することが大切です。

 

多くの場合、検査することの意義は

「今後発症しないようにする」ことが重要なのであって

であれば

今後はその原因、被疑薬を避け、摂取しないこと に尽きます。

 

 詳しく調べ、その成分の何が原因であるのか、までを究明することに

そこまで大きな意義があるのかどうかは私はあまり思えないのですが

とはいえご本人の意思ですので尊重せねばなりません。

 

とりあえず患者さんご本人にはその場で適切なご説明ができませんでしたので

残念に思いあらためて調べた次第です。

 

ではでは、本日で週末ですね。

私はいちんちがんばってよい週末を迎えたいものです!

 

ではではー