Yanase Derma’s Diary

皮ふ科専門医による皮ふ疾患や論文などの紹介です。https://www.yanased.com/

【雑感】秀教授 退任記念地方会 【皮膚疾患まとめ】picoレーザーとシュニッツラー症候群【専門家向け】

みなさまおはようございます。

やなせです。

 

昨日からリーガロイヤルホテル広島にて 

わが広大皮膚科学教室の教授退任に伴う記念地方会が行われています。

秀教授の甥御さんにあたる先生(東大医学部卒で病理医!)がピアノでもさまざまなコンクールを受賞された、そのかたの奏でるショパンの幻想即興曲などの調べに心洗われ 

教授の退任記念講演ではこれまでの業績と行動における理念、研究に対する真摯な姿勢に心打たれました。

以前より「医局員の誰もが犠牲にならず、皆が活躍できる医局」「世界一の皮膚科学教室を」「偶然を必然化する力」など年度ごとにさまざまな目標を立てられ、その根底には広大医局が更により素晴らしいものになるようにそして医局員のさらなる活躍と幸せを祈る、そのような姿勢があったように思います。私は秀教授が就任された翌年に入った2期生ですので私の皮膚科勤務医人生は秀教授とともにあったといっても過言ではありません。秀教授の蕁麻疹における研究が世界に大きな足跡を残されたのはほんとうに素晴らしいことです。まだ新教授は決まってはいませんが新たな広大医局が更なる隆盛を迎えることを祈っています。

またこの場を借りて 全国から秀教授の退官記念においでいただいた、あるいは参加いただく全国の先生がたに御礼申し上げます(東北や東京、南は沖縄から参加いただきました、秀教授の人徳のなせる業と思います)。

 

さて、明日講演会で座長の任をいただいてましたので予習します・・💦

 

2つほどまとめます。

以下は自分用まとめ、および医師、専門家向けですので読み飛ばして大丈夫です。

1) pico レーザーの有用性

2) Schnitzler症候群

 

1) picoレーザー

レーザーの原理は以前のブログで脱毛に関して書いた時も少し触れましたが

【美容】脱毛レーザーの施術時期は? - Yanase Derma’s Diary

レーザーはそろえた単一波長を増幅させる熱エネルギーで組織を破壊します。

いずれ時間があるときにまとめるかもしれません。

 

シミの除去には、以前は

ナノ秒(10^-9;10億分の1秒)単位で照射できる〝Qスイッチレーザー”が広く使われていました(熱緩和時間:50nsec)。

ピコレーザーはナノ秒よりもさらに短いピコ秒(10^-12;1兆分の1秒)単位での照射を行えるレーザー治療機です(熱緩和時間:750psec;0.75nsec)。

 

ピコレーザーはQスイッチレーザーと比べても痛みが少なく、色素沈着を起こしくい上に施術後のリスクを軽減できる次世代の治療法とされています。

調べるとピコAlex(PicoSure®)とピコNdYAG(Pico®)の2種類があるようですね。

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波長に関してAlexは755nmでNd:YAGは532/1064nmです。

波長は長いほうが深達性がよいですので(ただしその分メラニンへの吸収は減りますが)NdYAGの1064nmのほうが色素が深い部位にあるtatooや太田母斑には有効性が高いといえるかもしれません。従来のQスイッチでは苦手としていた青や緑の入れ物に対して有効性が高いとされています。また、LASER toningで肌の若返り(rejuvenation)も可能と考えられます。明日の講演を聞いて勉強したいと思います。

追記)

1064nmでは結構施術後の出血がみられるとのこと、深在性の太田母斑でも

1064ではなく730nmで照射することが多いとのことでした。

宮本形成外科の院長のご発表でした、ありがとうございました。

参考文献

1) Picosecond laser | DermNet NZ

2) 渡辺晋一先生 皮膚科におけるレーザーの基本原理 JJSLSM,27(4),315, 2007

 

2) Schnitzler症候群

葦麻疹は日常診療で頻繁に遭遇するごくありふれた疾患ですが、日本皮膚科学会からの「葦麻疹診療ガイドライン」にもあるようにその原因は多岐にわたり時に遺伝性疾患の部分症状として認められることがあります。

一見葦麻疹の様な皮膚症状を伴う”自己炎症性疾患”と呼ばれる疾患の一群があり、以下に示します。

 

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文献 2)Krause K, et al.: Allergy 67: 1465-74, 2012 

1)概念・定義
 1974年にSchnitzlerらにより提唱された疾患で,慢性の葦麻疹・間欠熱・関節痛(関節炎)・骨痛などを認める.皮疹は慢性葦麻疹と同様か,葦麻疹様血管炎の像を呈する.膨疹はかゆみを伴う場合と伴わない場合がある.血清中にモノクローナルなlgMの増加を伴うことを特徴とする. 

2)病因・病態
 1999年Lipskerらによって,それまで報告されてきた症例の詳細なレビューがなされ,
Schnitzler症候群とCINCA症候群の類似性が初めて文献的に指摘された.その後,CINCA症候群に著効する抗IL-1療法が8割程度のSchnitzler症候群患者に有効であることが明らかになってきておりm,IL-1βがその発症に深くかかわっていると考えられているが,詳細な発症機序については明らかにされていない. 家族集積を欠くことや高齢発症(発症平均年齢;51歳)が多いことから,後天的な原因が推察されている.
 3)臨床症状
 反復する慢性葦麻疹を特徴とする.Schnitzler症候群でみられる葦麻疹は,通常,抗ヒスタミン薬に抵抗性であり,組織学的には好中球性葦麻疹の像を呈する.
 a.発熱・易疲労
 ほとんど全ての症例で間欠熱を認める.40℃近い周期性の発熱がみられるが,悪寒戦懐を伴うことはまれである.発熱に伴い,易疲労感を認めることが多い.多くの症例で,発熱は皮疹の出現と関連しない.
 b.筋骨格系症状
 約80%の症例に認める.骨痛は特徴的な所見であり,腸骨・脛骨に多い.頻度は少ないが,大腿骨・脊椎・前腕・鎖骨に認める場合もある.関節痛や時に関節炎を認める場合があるが,これまで関節破壊や変形に至った症例の報告はない.30~40%に骨病変を認め,osteocondensation(骨凝縮)が最も多く認められる.溶骨性病変や骨膜反応を認める場合もある. 画像的にはPOEMS症候群, Erdheim-Chester病・Camurati-Englemann病・Buschke-Ollendorff症候群・大理石骨病・melorheostosis(流蝋骨症)・Ribbing病・肥大性骨関節症が鑑別に挙がる.病変部の骨生検では異常所見を認めないか,非特異的な炎症像を認めるのみであるが,一部の症例で骨芽細胞過剰活性化の所見を認める.
 c.臓器肥大
 45%で腋窩・鼠径部・頸部のリンパ節腫大を認める.多発性・持続性で2~3cmほど腫大する場合があるが,組織学的には非特異的な炎症を認めるのみである.1/3の症例で肝脾腫を伴う. 

 d.その他
 IgM monoclonal gammopathy of undeterrnined significance(MGUS)と同様,15~20%の患者でWaldenstr6mマクログロブリン血症や他のリンパ増殖性疾患へ移行する症例がある.また,遷延する炎症を抑制できない場合,全身1生AAアミロイドーシスを来す.
 4)検査所見
 50%程度に炎症による二次性の貧血・血小板増多症を,2/3の症例で持続性の好中球増多症を認める.80~90%の症例に単クローナルなIgMの増加を認める.残る症例においては,IgMλやIgGのモノクローナルな増加を認めることがある.補体価は通常,正常~上昇を示し,低下している場合は,他の疾患を考慮する必要がある.
 5)診  断
 臨床症状・検査所見に基づく診断基準であり,他疾患の除外が重要である.多
くの症例で,診断に至るまで5年以上を要すると報告されている. 

 6)治  療
 2005年にIL-1受容体拮抗薬anakinraの有効性が報告された。

 

追記)

本邦での37症例をすべてまとめてのご発表でした。大変な症例で集められるのは大変だったと思います。シュニッツラー症候群は極めてまれですので診断に至るには平均3.5年経過しているとのご報告でした。見逃さないためにはその疾患を知っていることが最も重要とのこと。なお秀教授からの追加コメントで、monoclnonalなIgMはそこまで高値とはならないならないこと、疾患をみつけても治療が高額なのではやく難病の適応になる必要があるとのご意見を頂戴しました。

京都大学の神戸直智准教授のご発表でした。ご参加ありがとうございました。

 

以上です。では本日も頑張りましょうー。

 

免責事項:上記内容は筆者の各文献資料のまとめによりますが筆者の私見によります、実際の使用にあたっては主治医の先生の判断を仰いでくださいますようお願いします

適宜筆者判断で内容は改訂いたします。